MENU
サイトリニューアルいたしました。未完部分もありますが順次作業中です!

凍結乾燥装置

電子顕微鏡で生物試料を観察したい場合、そのまま真空に入れてしまうと形状がつぶれて干物のようになってしまいます。凍結乾燥装置は、生物試料などの水分を多く含む試料を収縮変形させることなく乾燥させるための工程で利用される装置です。

世間一般的に言われている凍結乾燥は、食品等を冷凍した状態から乾燥させて成分を残し、加工しやすく、また保存しやすくする目的で利用される装置です。電子顕微鏡用の試料作成とは異なるため、概要を分かりやすく解説いたします。

目次

動植物の構成元素

私たちや動物の体は約60%以上が水で、残りのほとんどが水素、炭素、窒素、酸素の4元素で出来ております。
植物はこれら4元素に加えてリン酸、カリウム等が多く含まれます。

試料作成と水の問題

生き物の細胞には水分が多く含まれていて、そのまま電子顕微鏡に入れて観察することは出来ません。
本来の形状を保ったまま観察を行うためには、これらの細胞が壊れないための前処理をしなければなりません。

生物試料をそのまま真空の中に入れると、細胞は破壊され干物のようになってしまいます。

試料作成の最初の処理(固定)

まずは細胞を形成する脂質やたんぱく質を固定します。
一般的には、グルタールアルデヒドとオスミウム酸による二重固定が広く用いられております。

化学固定は、その生物の生育環境や構造的強さも考慮して行うことが必要です。大変奥が深い分野のため、専門家の著書等が役に立つでしょう。

水分を取出す処理(アルコール置換)

50%アルコール溶液に浸すと、細胞内の水分は細胞膜を通じて徐々にアルコールへと置換されていきます。
徐々にアルコール濃度を上げ、最終的に100%アルコール置換を行います。置換の工程では、緩やかな上昇系列で段階的に行っていきます。

水分を取出す処理(t-ブタノール置換)

次に、同様にアルコールからt-ブチルアルコールへ段階的に置換を行っていきます。
脱水工程では最終的に、100%のt-ブチルアルコールに満たされた試料を作成します。

※t-ブチルアルコールは大気中の水分も吸湿しやすいです。最終工程では、試料カップに蓋を乗せたり、パラフィルムを被せたりといった、大気になるべく晒さない工夫が必要です。

凍結乾燥装置の工程

t-ブチルアルコール100%に置換された試料を乾燥状態に仕上げていく過程で使われるのが凍結乾燥装置です。
次の「凍結」、「乾燥」、「試料の取り出し」の工程は弊社の装置にお任せください!

試料の凍結

試料カップに試料を入れ、浸る程度にt-ブチルアルコールを入れてください。吸湿の影響を最小限にするため、試料カップには蓋を載せると良いでしょう。このまま冷蔵庫に入れて冷やし、t-ブチルアルコールを凍結させていきます。

※凍結乾燥装置には、試料を冷却する機能も備わっているので、冷蔵庫に入れなくても凍結を行うことが可能です。
※t-ブタノールは25℃を下回ると凍結し始めます。試料内部までしっかりと冷却して凍結させてください。

試料の乾燥

完全に凍結した状態の試料が入ったカップを装置に入れ、真空排気を行います。真空排気中も、温度が上がって液体に戻らないよう冷却を続けながら排気します。
そうすると、固体のt-ブチルアルコールから気体となって昇華していきます。昇華したt-ブチルアルコールの蒸気はカップの蓋の隙間から排出されていきます。

試料の乾燥完了

この昇華により、試料内部のt-ブチルアルコールが完全に排出され、試料の構造が壊れることなく乾燥した状態が出来上がります。
フリーズドライと原理は同じですが、電子顕微鏡観察用の試料作成の場合は形状を保つための繊細な前処理が必要です。

試料の取り出し

装置の中で完全に乾燥した試料を取出す前に、試料を室温~40℃程度に温めます。これは、冷却されたままの乾燥試料をそのまま取り出そうとすると、空気中の水分がくっつき、結露してしまうからです。
水分を含んだ試料は使えなくなってしまいます。

また、真空から大気に戻す過程では、ゆっくりと時間をかけて圧力を戻していく必要があります。

※凍結乾燥装置には、試料を温める機能、ゆっくりと大気圧に戻す機能が備わっております。

真空デバイスの凍結乾燥装置

ここまでの、「凍結」「乾燥」「取り出し」を凍結乾燥装置で行うことで上手に試料作成ができるようになります。弊社装置のラインナップは2種類。それぞれの特徴をまとめてみました。

外観
型式VFD-21SVFD-30
操作マニュアルフルオート
冷却性能0~5℃ー5℃~0℃
排気コントロール1系統
ノーマル処理
2系統
ノーマル処理、高精細処理
乾燥状態の確認目視真空度モニター
試料ステージ専用カップ(4個)試料台フラット型大面積冷却試料台
シャーレをそのまま入れることも可能です。
特徴低価格
凍結乾燥に対する知識と経験のある方におすすめです。
高機能でお買い得
初心者でも失敗のない装置です。
試料の取り出しまで、完全フルオートで時間を有効に使えます。

お勧めの凍結乾燥装置はVFD-30

VFD-21Sはマニュアル操作で、凍結具合、乾燥具合も自己判断が必要です。VFD-30では冷却性能も高く、乾燥工程においても真空度モニターにより乾燥具合を判断いたします。これにより、乾燥したかどうかを自己判断可能となり、確実な凍結乾燥操作が可能となります。

ふわっとしたような繊細な試料を処理する場合、VFD-30の高精細モードが役に立つでしょう。ノーマル排気モードよりもさらにやさしくゆっくりと昇華を行っていきます。ぜひご検討ください。

試料の載台とコーティング

軽元素で構成された生物試料は導電性が無いため、SEM観察前に導電コーティングを施す必要があります。
導電コーティングの処理には試料ダメージが無く、回り込み性に優れたオスミウムコーターが良いでしょう。

観察倍率や形状によっては、金や白金などをコーティングする場合もあります。

観察

ここまで長い道のりを経て観察できるところまで来ました。
すべての結果は凍結乾燥前の前処理にかかっています。面白い発見があると嬉しい!

このページで紹介した装置

関連コンテンツ

目次