ここでは、生物試料の電子顕微鏡観察を行う上で必要な工程を解説する上での、あらかじめ理解しておくべきことを簡潔にまとめております。なぜ、生物サンプルは前処理が必要なのか、なぜ導電成膜が必要か、イメージを掴めて頂けましたら幸いです。
それでは先生、ご指導宜しくお願いいたします。
前処理・化学固定の必要性について
まず初めに理解しておくべきこととは、電子顕微鏡観察においては試料を真空の中へ入れるということです。真空とは、空気の無い空間です。水分などはどんどん蒸発してしまいます。
自然界の生物はおよそ75%の水分を含んでいますので、観察する場合に何の処理もせずに電子顕微鏡の中へ入れますと、試料からの水分で真空が上がらない(真空にならない)ばかりか、形が干物のように変形してしまいます。
そのため、生物試料を観察する際は試料に化学的な処理を加えて、可能な限り生きた状態近くに保存し、水分を除去する必要があります。
生きた状態に近く保存することを「固定」、水分を除去する操作を「脱水・乾燥」と言われております。
すべてを完全に保存する方法は無く、歪みのない表面構造を残すような処理を目指すことになります。
乾燥した生物試料の導電処理について
次に処理を行った生物サンプルですが、生物を構成する元素は軽い元素で出来ています。例えば、水素、酸素、炭素、窒素、燐などで、電子顕微鏡観察のための二次電子を得ることが出来ません。そこで、試料表面を薄い導電膜でコーティングする必要があります。様々な金属が試されたようですが、装置の簡便性、粒子の細かさなどから、金、金パラジウム、白金、オスミウムが一般的に広く利用されております。いずれにおいても試料表面に均一な導電膜を形成し、二次電子の発生効率を高めてよいコントラストの画像を得るとともに、顕微鏡内で起こる帯電を防止する役目も果たします。
それでは、まずは基本的な流れを次のページから解説してまいります。
基本的な流れが理解出来ましたら、それぞれの利用領域に応用頂ければと思います。
記事監修