支持膜としては主にコロジオン、フォルムバールがよく用いられますが、カーボン膜は耐熱性や科学的安定性に優れ、支持膜として利用されることも増えております。
また、カーボンはコロジオンなどの膜の上に補強の目的で薄くコーティングすることにも利用されております。
目次
支持膜作成の準備
必要となる道具・装置
支持膜作成装置
親水処理装置(PIB-10またはPIB-20 真空デバイス)
高真空蒸着装置(VE-2013またはVE-2050 真空デバイス)
器具類
- 先の良く研ぎ合わされたピンセット(作業者用)
- 200ml,100ml ビーカー各1~2個
- 小さなプラスチック容器(試薬瓶の内蓋でも代用可能)2個
- グリッド支持台
- パスツールピペット(ガラス)+キャップ 数本
- スライドガラス 数枚
- スライドラック(あれば便利です)
- シャーレ(Φ120mm,Φ45~50mm)1~2個
- グリッドケース
試薬・消耗品
- コロジオン(2.0%酢酸イソアミル溶液)
- マイカ
- ろ紙
- 安全カミソリ(片刃)1~2枚
- TEMグリッド(使用予定の物)
- 蒸留水
作業手順
下準備
- 小さな容器に2.0%コロジオンを少量入れて置きます。
- グリッドをろ紙に必要量取り出します。
- ピンセットでグリッドを一枚取り出し、コロジオンに浸し、乾かないうちにろ紙の上に叩きつけるように置きます。この作業は予定のすべてのグリッドに必要で、コロジオン膜とグリッドを密着させる効果があります。
※必要枚数の処理が終ったらグリッドが完全に乾くのを待ちます。この待機時間中に次の準備に入ります。
※グリッドが完全に乾燥している事を確認し、小型のシャーレーに入れて親水化処理を行います。
カーボン蒸着
- 平らなカーボン膜を作成するため、マイカの剥離面を利用します。ピンセットで水平方向に1層剥離した剥離面を使用します。
- 剥離面に対してカーボン蒸着を行います。
卓上型高真空蒸着装置に入れて、カーボン蒸着を行います。真空デバイスのSLC-30が使い勝手よく再現性が良いのでおすすめです。
カーボン膜の剥離
- 支持膜作成装置に蒸留水を入れ、コロジオン溶液を2、3滴滴下してください。
- 水面のコロジオン膜が固まりましたら取り除いてください。
コロジオン膜を張って取り除く目的は、水面に浮かんだゴミやほこりを綺麗にするためです。 - 次に、支持膜作成装置のメッシュの上にガラス板とグリッドを沈めてください。グリッドの親水化が良く出来ていないところは気泡がくっつく場合があります。
- グリッドは光沢がある面がオモテです。この面に対してカーボン膜を乗せていきます。
- マイカに蒸着したカーボンは、そのままだと水面で剥がれにくいので、あらかじめ四方に切り込みをつけておいてください。
カーボン支持膜の作成
- 水面にカーボンを蒸着したマイカを、斜め45度程度にしたままゆっくりと沈めていきます。
- 水面でカーボン膜が剥離しましたら、ドレンより少しずつ水を抜いて、グリッドの上にカーボン膜がかぶさるように調整します。
- 水抜きが完了しましたら、グリッドの上に乗せたカーボン膜の横からろ紙を当て、余分な水分を吸収してください。あとは完全に乾くのを待ってください。
- カーボン支持膜を張る作業は100%完璧に出来るとは考えず、複数処理して使用に耐える出来栄えの物を使うつもりで挑戦してみてください。また、本記事で紹介しているやり方はひとつの例ですので、様々な文献をご参考にしてみてください。
トラブルシューティング
カーボン膜がばらばらになってしまう?
水に沈めた際、カーボン膜がばらばらになってしまう原因は、カーボン膜が弱いことが考えられます。よくある事としては、高真空蒸着装置以外でカーボン成膜を行っている場合です。カーボン支持膜の作成は、ロータリーポンプ排気のカーボンコーターではなく、高真空排気の蒸着装置を使用してください。
高真空蒸着装置(VE-2013またはVE-2050 真空デバイス)
カーボン支持膜にサンプルがうまく載せられない?
カーボン膜は強い疎水性を示します。そのため、滴下サンプルが均等に広がらないこともございます。
この場合、グリッドに親水処理を施したり、可能であれば少量のエタノールを添加することで改善できますのでお試しください。