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分子線セル(クヌーセンセル/Kセル)の解説

目次

分子線セル(クヌーセンセル)とは

分子線セルとは、ルツボ内の原料をヒーターにて加熱することにより飽和蒸気圧の分子線を発生させ、基板に原子層を一層ずつ結晶成長可能な超高真空(10-8Pa程度以下)に対応の抵抗加熱型の蒸着源のことです。分子線セルの前方にシャッターを取付け、シャッターを開閉することにより分子線のオン、オフを行うことができます。分子線セルの名称は、クヌーセンセル、Kセル(K-CELL)、エフュージョンセル等で呼ばれています。

分子線セルの用途

分子線セルは、蒸発温度制御が容易な元素ソースの蒸着源として用いられ、例としてガリウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムなどの蒸着源として使われます。分子線セルを使って超高真空環境下で結晶成長させることで、成長室内の残留不純物が取り込まれにくく、高品質の結晶膜が得られます。

蒸発速度制御が容易であり、定められた場所にのみ分子を入射させることが出来るため、精密な制御を必要とする分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy :MBE)による半導体の結晶成長が可能となります。MBE装置では、基板加熱も重要で、精密に制御された基板温度で結晶が成長されます。又、複数の分子線セルを独立に制御することで、原子比のよく制御された合金膜を作成することができます。

MBE装置では、RHEED(反射高速電子回析)等の結晶モニター等を用いてin-situでモニターしながら、結晶成長条件へフィードバックすることが可能です。

【 MBE装置の概略図 】

分子線セル内部部品の主な材質

ルツボは、蒸発温度や原料及び用途によりPBN、タンタル、石英、グラファイトなどを使用します。
加熱用のヒーターは、タンタル、タングステンなどを使用します。
熱遮蔽板は、モリブデン、タンタルなどを使用します。

シャッター機構

試料の蒸着可否を制御するために使用される部品で、分子線セルの前方に取付けます。手動又は自動操作により開閉します。

EB(電子ビーム)蒸着との違い

EB蒸着は、膜厚計からのフィードバックで行うため制御が難しいが、分子線セルは原料の蒸発温度の制御が容易にできます。
EB蒸着は、高電圧を印加するため、高電圧機器が必要となり、装置構成も一般的に高額となります。
EB蒸着は、ルツボを冷却するための冷却水循環機構が必須となります。

スパッタリングとの違い

スパッタリングは、真空中に不活性ガスを導入してグロー放電が発生する低真空域(10-1Pa程度)まで落として行いますが、分子線セルを使ったMBE装置では超高真空域(10-8Pa)以下で行うため、高品質の成膜が可能と成り、品質の向上が期待できます。
スパッタリングは、成膜速度が遅く時間がかかりますが、分子線セルは成膜速度が数倍速いため短時間で成膜を完了することができます。
スパッタリングは、プラズマによる影響が対象物に及ぶケースが有ります。
スパッタリングは、スパッタ用電源の高価さや真空チャンバーの定期的なメンテナンスが必要と成ります。

分子線セルでは基本的に成膜の真空領域が全く異なるため、スパッタ機構とは共存いたしません。
両方装置に取り付けることは可能ですが、Kセルを汚染する可能性が高くなります。

真空デバイスのKセル加熱コンポーネント・仕様

Kセル加熱コンポーネント共通仕様
最高使用温度1300℃MAX.
ルツボ材質アルミナ/PBN/Ta/その他
ヒーター材質Taワイヤ
熱電対Cタイプ(W/WRe)
シャッター駆動機構オプション
加熱制御電源オプション
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